ニャヌュパ・ガイモ・ガイモ

ンドペソド・ンゴイ・ンゴイ

自転車泥棒

なんだか矛盾したようなことを言うけど、僕は小さい頃から思い出話が好きだった。
昔から行動的な方ではなかったので、少ない経験を、反芻して、繰り返し話していたのだろう。
取り立てて変わったことの起きない(かといってまったく何もないのも中央値から外れているだろうから、人様に大きな影響を与えない程度の小さな出来事が起きる程度の)普通の人生だったので、人様に大きな影響を与えない程度の小さな出来事をまるで大事件のように話しては、退屈そうな顔をしている話し相手を沢山見てきた。だから、お話一発で人を惹きつけられる人を心底尊敬してしまう。面白いこともさらなり、人前で噺を打って、相手の顔色を見て、不安になりはしないのだろうかと。



別に自転車を泥棒されたわけではない


小さな思い出話をしようと思う。
僕にとっての人生の大事件は二つくらいしかなくて、一つはチュニジアを旅行したら現地で革命が起きて巻き込まれたことで、もう一つは中学生の頃に引ったくりに遭ったことだ。チュニジアの話はまた今度書くとして、今日は引ったくりに遭ったときのことを書こうと思う。

僕には自転車運がない。自転車運という言葉があるのかは知らないけれど、とにかく自転車にまつわる不幸話が多い。僕の右フクラハギには、キリトリ線みたいな点々の傷跡があって、それは小学生の頃、友人の永見の家に遊びに行くときに自転車のペダルを踏み外してチェーンに脚が巻き込まれてしまい、付いたものだ。永見のお母さんにオロナインを塗ってもらって事無きを得たのだけれど、傷跡は残ってしまった。痛々しい気もするけど、眠たい顔に似つかわしくない傷跡が、ワイルドな感じを演出してくれるので、ちょっと気に入っていたりもする。なお、他人にフクラハギを見せる機会はあまりない。


中学生の頃に起きた事件も、やはり、自転車に乗っているときに起きたものだ。
確かそのとき僕は中学三年生だった。受験生だけどそこそこ成績の良かった僕は暇を持て余していたので、友人の浦野の家に自転車で遊びに行くところだった。永見から借りたポケモンゲームボーイ、あと湖池屋のスコーンだけをカバンに突っ込んで、自転車の前カゴに入れていた。まるで小学生だけどしょうがない。昔から行動的な方ではなかったから。
フクラハギを怪我した場所と平行して走っている坂道を下っているとき、二人乗りの原付にカバンを引ったくられた。今でも覚えているけど、僕のカバンを引ったくったのは茶髪のツイストパーマだった。とても動転したけど、そこそこ成績の良かった僕は通学路にある「こども110番の家」に指定されている店の場所を覚えていたので、自転車で坂道を駆け上がって、110をして、オレンジジュースを貰って、警察を待った。パトカーの中で事情を聞かれた。下校中の同級生に見られて、とても恥ずかしかった。数時間後見つかったカバンからは永見から借りたポケモンゲームボーイも無くなっていた。あと湖池屋スコーンも無くなっていた。


小さなことを面白く話すのは難しい。